東京ライフスタイル探訪

【vol.7 祖師ヶ谷大蔵】『家族の平和』をウルトラマンが見守る優しい街

皆さまこんにちは。東京の街を愛する宅地建物取引士、伊勢谷(いせたに)です。こちらの連載では東京の様々な街を “暮らす目線” と “不動産屋目線” でご紹介していきます

世田谷区の西側 小田急線の準急停車駅

今回訪れたのは「祖師ヶ谷大蔵」駅。商店街に活気があり、かつ緑に恵まれた環境ということで、“ファミリーにとって暮らしやすい街” という印象があります。1歳の娘を育てるママでもある筆者が、実際に街を歩きながら感じたことを記事にしたいと思います。

「祖師ヶ谷大蔵」は小田急線の準特急停車駅で、お隣駅「成城学園前」までは徒歩13分(約1km)、「千歳船橋」までは徒歩18分(約1.4km)と、意外と近距離。一方で駅の南北は広い範囲で住宅街となり、北の京王線、南の田園都市線までいずれも約3kmと距離が開いています。千歳船橋駅との間には「環状8号線(環八)」が通っており、車移動がしやすいという特徴も。

▲駅の北側は “祖師谷” “千歳台” などのアドレスがあり、駅の南側は “砧” アドレスです。

街のマスコットは「ウルトラマン」 気合いの入り方が違います◎

駅の北口を出ると、まず出迎えてくれるのが腰に手を当て仁王立ちの「ウルトラマン シンボル像」。案内板もウルトラマン、街灯もウルトラマン、上空にもウルトラマンと、まさに商店街をあげてウルトラマンを推しています。

その名も「ウルトラマン商店街」。駅の南北西の3方に広がっています。理由は、この街にかつてウルトラマンを制作していた「円谷プロ」の事務所があったから。“砧エリア” には現在も「東宝撮影所」や「TMC(東京メディアシティ)」があったりと、昔から映画やテレビの関連企業と縁が深いんですね。

▲子どもじゃなくても心躍るウルトラマンのオンパレード。いくつかの街灯支柱には覗き穴が付いていて、中には作中のワンシーンが描かれています。


商店街にマスコットキャラクターを掲げているところはいくつもありますが、ここまで徹底してこだわり抜いている街は記憶にありません。歩いているだけでなんだか元気が湧いてきます! 間接的にパワーを貰えるってすごいですね。

▲左・「ウルトラマン商店街加盟店MAP」。2024年の最新版です。毎年刷新するだけですごいエネルギー!/右・「社会福祉法人せたがや樫の木会 わくわく祖師谷」の前にはカネゴン像があり、筆者も大人気(おとなげ)なくツーショットを撮って帰りました(笑)

充実の買い物環境 ただし車の通過にご注意を

商店街はまさにお買い物天国。駅直結のスーパー「小田急OX」のほか、なんと駅の南北それぞれに「オオゼキ」が。それだけでなく、八百屋さん、肉屋さん、魚屋さん、パン屋さんなど、個人店も賑わいをみせています。

ご注意点としては、道幅の狭い商店街の中をバスやトラックなど車が通ること。自転車移動されている方も非常に多いですし、ベビーカーや杖を突いている方も見かけます。通行する際にはお気をつけください。

▲左上・駅南口にある「オオゼキ 砧店」。/右上・北口にある「木梨サイクル」はあのお笑い芸人 木梨憲武さんのご実家としても有名。/左下・魚屋さんと肉屋さんが並んでいます。/右下・八百屋さんの前をバスが通過。皆さん車の通行があるたびに足を止めて端に寄っていました。

緑が多く  爽やかな住宅街

活気ある商店街を抜けると、そこは至る所で緑が視界に飛び込む閑静な住宅街。取材中、何度も風に揺れる木々の音や鳥の声に癒されました。建物が密集したエリアを抜けると、ふと小さな公園や学校に出会う。そんな情景が繰り返され、息が詰まることがありません。背の高い建物が少なく、常に空が広く見えていたことも要因のひとつでしょうか。

▲左上・駅北口にある「祖師谷住宅」敷地内。約7万㎡に全37棟(総戸数1,020戸)が建ち、1955-56年に竣工しましたが、現在は老朽化のため建て替えが決定。新たに「(仮称)カーメスト祖師谷」として2027-2038年度に順次竣工を迎える予定です。/右上・マンション前の緑道。/左下・隣に小さな公園があるマンションも。/右下・ちらほらと「世田谷区生産緑地地区」も見かけます。

大きな公園から  小さな公園まで

冒頭のMAPにも描き込みましたが、駅の南側には「砧公園」、北側には「祖師谷公園」に「蘆花恒春園」と、広大な面積を誇る都立公園に自転車で気軽に遊びに行ける距離。

今回の取材に合わせ、休日に娘とともに「砧公園」へ遊びに行ってきました。

▲下・園内にある「みんなの広場」は障がいのある子もない子も一緒に遊べる広場です。


『子どもは遊ぶのが仕事』とよく言いますが、思い切り走り回れる環境が近くにあるのはとても大切ですよね。もちろん、大人がリフレッシュに出かけるにもうってつけ。園内には「世田谷美術館」もあり、ファミリーからカップル、ご年配の方も多く見かけました。

▲左上・近隣小学校の親睦会が開催されており、なんと知人に声をかけられ驚きました(笑)/右上・ちょうど見頃を迎えていたバラ園。/左下・「世田谷美術館」では民藝の展示中で、行きたい欲を抑えるのに必死でした。/右下・名物「きぬた焼き」(今川焼のようなお菓子)を販売する売店も。

一方、近所に遊具が置かれた公園があるのも大助かりだと思います。これまで取材してきた都心の街だと、ひとつの公園に子どもたちが集中して混雑! という感じでしたが、祖師ヶ谷大蔵では分散できるだけの数があるためか、どこも程よい賑わい。親の立場からすると安心です。

▲左上・土地の傾斜を利用した大きな滑り台がある「富士見公園」。周囲に建つマンションの良い風穴になっているように感じました。/右上・保育園が隣接する「草山公園」。/左下・谷戸川沿いにあった緑道。/右下・祖師谷住宅敷地内の「中央公園」。

保育園、幼稚園、小学校  子どもたちの居場所もたくさん

取材前に学校施設についてリサーチしたところ、広い園庭のある保育園や幼稚園が複数あることに驚きました。とても魅力的に感じ、じっくり時間をかけてそれぞれの園を巡り歩いてみたいと感じたほど! 超都心だと、なかなかお庭のある園にすら巡り合えません。お子さまが毎日長い時間を過ごす場所だからこそ、環境はとても大切ですよね。

▲左・世田谷区発行の「世田谷区の保育施設」より抜粋させていただいたマップ。成城方面は園の数が少ないため、駅の東寄りで探すのが良さそう。/右上・祖師谷住宅の一角にあった「祖師谷わかば保育園」。/右下・ちょうど行事の日だったのか、たくさんの親御さんが自転車で集まっていた「あけぼの幼稚園」。

公立の小学校は駅の南側にある「山野小学校」、北側にある「祖師谷小学校」(ちなみにすぐ近くには「成城幼稚園」「成城学園初等学校」があります)の前を通りかかりました。いずれも子どもたちがのびのび校庭で遊んでいましたよ。
 

▲左上・「山野小学校」/右上・「祖師谷小学校」/下・「成城学園初等学校」の敷地は大きな木々に囲まれていました。

そのほか、子どもが遊んだり、学びに行ける施設も複数発見。「山野児童館」は蔦が絡まる趣深い建物。「祖師谷児童館」は区民プラザと同じ建物内にあります。いずれも0歳児から利用可能で、おでかけ広場や保護者同士の交流など様々なプログラムが用意されています。児童館ではサマーキャンプやお祭りなども開催。もちろん、中高生の利用も可能です。成城学園前との間には「砧図書館」もありますよ。

▲上・「山野児童館」/左下・「祖師谷児童館」/右下・「砧図書館」

ファミリータイプの物件がメイン アドレスごとに特徴あり

まずざっと世田谷区の用途地域を確認したところ、「祖師ヶ谷大蔵」駅の南北はほとんどが第一種低層住居専用地域に指定されており、その中にポツポツと第一種、第二種中高層住居専用地域が混ざっているという印象でした。

“祖師谷” “千歳台” “砧” 3つのアドレスの過去3年間の成約データを集計すると、土地の取引きは36件、中古戸建ては91件、中古マンションは187件でした。

▲東日本流通機構(REINS)に登録された、過去3年間(2021/5/1-2024/4/30)の成約事例を集計したもの(オーナーチェンジ物件を除く)。未登録物件はカウントしていないため、全成約を網羅できているものではないことをご了承いただいた上で、ご参考までにご覧ください。(土地は面積の制限なし、中古戸建てと中古マンションは建物面積 / 専有面積それぞれ45㎡以上、いずれも価格の制限なし)

さらに細かく分析すると以下のチャートのようになります。

まず全体に、平均平米数が広いことにご注目いただきたいです。中古戸建ては平均で90㎡以上、中古マンションも約70㎡くらいが平均値です。それだけファミリータイプの物件が多いということですね。

チャート内の注目ポイントをピンクで囲いましたが、まず “祖師谷” は中古マンションの成約が極端に少なく(なんと4-6丁目は成約ゼロでした)、中古戸建ての成約が最も多い結果となりました。これはアドレスのほとんどが第一種低層住居専用地域に指定されており、マンションの建設が難しいからだと思われます(その分坪単価は最も高額です)。

また中古マンションは “千歳台4-6丁目” が最多の66件となっていますが、これは「東京テラス」という総戸数1036戸のマンモス規模のマンションが頻繁に取引されているためです(ちなみに敷地内で最も祖師ヶ谷大蔵駅に近い棟でも徒歩23分ほどかかります)。

駅南側の “砧2,4,6,8丁目” は土地、中古戸建てともに最も坪単価が高く、人気があることが伺えます。

まとめ

取材と調査を元にまとめた「祖師ヶ谷大蔵」のポイントは以下の3つ。

・買い物便利、住環境良好
・ファミリータイプの物件がとても多い
・人が優しい

商店街に活気があり、大小様々な公園があり、学校施設なども充実。さらにファミリータイプの物件が多く供給されているとなれば、やはり『ご家族にオススメな街です!』と太鼓判を押したくなります◎ 記事冒頭で想像していた “ファミリーにとって暮らしやすい街” は間違いじゃありませんでした。

また、取材時に感動したのは人の優しさです。「写真撮りましょうか!」と声をかけてくださったり、お会計後にわざわざ「レシートにクーポンが付いてたので良かったら!」と店員さんが追いかけてくださったり、『ええぇ……! ありがとうございます!(感涙)』みたいなことが度々起きたんです。

気がつけばわたしも「以前こちらのパンをいただいて、とっても美味しかったです!」とお店で声をかけたりして、街の人々に感化されて優しくなっている自分に驚きました。こういう街で子どもを育てたら、きっと思いやりのある人に成長してくれるだろうなって心から思い、なおさら子育て世帯にオススメしたくなったのでした。

おまけ 〜わたしの取材メシ〜

今回の取材を通じて2日間(砧公園を入れると3日間)めっこり街を歩いたのですが、またしてもランチを食べる余裕がなく……。代わりに娘と食べるパン、友人への手土産のパンなどたくさん購入して帰りました。中でも初日の夕方立ち寄った「L’atelier de Plaisir(ラトリエ ドゥ プレシール)」さんのパンがあまりに美味しくて、2日目は開店の30分前から並んでリピート買いしてしまいました。後から調べると、なんとグルメ検索サイト「食べログ」で日本全国約3万店のパン部門の中で第1位に輝くお店だったのです(2024年5月現在)。友人のお母さまも「いままで食べたパンの中で一番美味しい……!」とすごく喜んでくださいました。絶対また行きます。
 

▲左上・住宅街の中にひっそりある「L’atelier de Plaisir」。開店30分前で既に2名待ち、開店の頃には長い列ができていました。/右上・断面が見えている「パン オ フリュイ ルージュ2022」は葡萄果汁のみで練り上げた生地に8種のフルーツ、6種のナッツ、3種のピールがギッシリ。/左下・娘に買って帰った食パンが絶品だった「わくわく工房」さん。カネゴン像の後ろの建物で製造され、改札前にこうして販売に出ることも◎ /右下・こちらも評判の高い「SINCERITE(サンセリテ)祖師谷店」。娘にブルーベリーパンとお芋のパンを買って帰りました。

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