東京ライフスタイル探訪

【vol.9 不動前】穏やかな時が流れる、都心の小さな門前町

皆さまこんにちは。東京の街を愛する宅地建物取引士、伊勢谷(いせたに)です。こちらの連載では東京の様々な街を “暮らす目線” と “不動産屋目線” でご紹介していきます。

「目黒」駅の隣ながら、駅周辺は品川区

「不動前」は東急目黒線の各駅停車駅で、お隣はJR山手線、東京メトロ南北線、都営三田線も乗り入れる「目黒」駅。乗車時間はたった2分で、あっという間に到着します。駅の北東側すぐのところを山手通りが走っており、そのほか首都高速や桜田通りなど主要な幹線道路も近く、車移動にも便利な立地です。駅周辺は品川区で、北西側へ進むと目黒区に突入します。

▲ 実は電車に乗らずとも「目黒」駅や「五反田」駅まで徒歩15分ほど。運動がてら歩くのもオススメです。

お寺の門前町として栄えたスモールタウン

駅名の由来になっているのは、平安初期に創建された「龍泉寺(通称:目黒不動尊)」。関東最古の不動霊場で、熊本の木原不動尊、千葉の成田山不動尊と並ぶ『日本三大不動』のひとつに数えられています。敷地面積が広く、境内は荘厳な空気に満ちていました。

▲ 上・仁王門前にて。毎月28日には縁日が行われるのだとか。/左下・山王鳥居越しに見る大本堂。/右下・大本堂の裏にある大日如来坐像(だいにちにょらいざぞう)。文化財に指定されています。

江戸時代になると参拝客が増え、門前町として栄え始めます。いまでも参道は「目黒不動商店街」としてその面影を残しており、“こんなところに時が止まったような場所があったなんて!” と驚きを隠せませんでした。

▲ 左上・「八つ目や にしむら 目黒店」は1960年から営業を続ける鰻の老舗。/右上・商店街の街灯下には “目黒不動尊参道” の旗が下がっています。/下・昔ながらのお肉屋さんや酒屋さんも残っています。

ほっこりする駅前と、桜並木が美しい「かむろ坂」

品川区・目黒区と聞くと駅前にはビルが建ち並び、多くの人が行き交う賑やかな街を想像する方が多いと思います。しかし「不動前」駅前は非常に穏やかな表情。特に午前中や夕方は住民と思しきベビーカーを引くママさんや、ご年配の方の姿をよく見かけました。しかしお昼の時間帯になると様子は一変! 周辺の街にオフィスが多数あることから、ランチに訪れたビジネスマンで活気付いていました。

▲ 左上・駅の改札前は車が入れないようになっていて、待ち合わせにも安心。/右上・駅の南北に広がる「不動前駅商店街」。昔懐かしい書店や靴屋さんなども軒を連ねています。/下・飲食店が多数入るビルの前は、午前中(左)とランチタイム(右)でこの人通りの差!

この街を語る上でもうひとつ外せないのが、駅の北側を線路と並行するように走る「かむろ坂」の存在です。山手通りから続くゆるやかな上り坂は桜並木になっていて、毎年このエリアに春の便りを届けています。地域住民の方々がボランティアで開催している「さくらまつり」も名物。お祭りのホームページに書かれていた内容が印象的だったので、記事の最後にご紹介しますね。

▲ 品川百景のひとつに数えられる「かむろ坂」。いまの季節は木陰が涼しい。

ちなみに駅周辺には「東急ストア」「オオゼキ」「マルエツプチ」などのスーパーがあり、買い物環境は良好です。

▲ 左・高架下にある「東急ストア」。/中央・かむろ坂沿いにある「オオゼキ」。/右・商店街沿いにある「マツエツプチ」。

区ごとに特徴が異なる子育て環境

さて、では「不動前」の子育て施設について見ていきましょう。まずわたしが一番ときめいたのは「品川区立 五反田文化センター」の存在。なんとプラネタリウムが併設されているのです! その近くには「荏原健康センター」があり、親子や子どもが参加できるヨガや体

操、ダンス教室が開催されています。同じ敷地内には「中原児童センター」「中原保育園」もありました。

▲ 左上・「品川区立 五反田文化センター」/右上・子どもたちの課外授業に遭遇した「荏原健康センター」前。/左下・「中原児童センター」、「中原保育園」/右下・駅前商店街とかむろ坂に挟まれるようにして建つ「品川区立第四日野小学校」は現在建て替え工事の真っ最中。

街中の公園については数が少ない印象でした。中でもボール遊びができる公園をふたつ見かけたのですが、いずれもフェンスで囲われてちょっと窮屈な印象。ちょうどボールがフェンスから飛び出し車道に落ちるところに遭遇し、肝を冷やす場面もありました(走って取りにきた子どもたちを制し、筆者が拾って渡しました)。
 

▲ 上・「かむろ坂公園」には遊具とボール遊びができる場所が用意されています。/下・通りがかった中では最も広かった「不動公園」。目黒不動尊の裏手にあります。

しかしご安心を。ここ「不動前」は、以前武蔵小山の記事でもご紹介した「林試の森公園」が射程圏内なのです。思い切り自然を感じたくなった場合は、こちらまで足を伸ばすのが良いでしょう。
 

▲「林試の森公園」の面積は約12万㎡で、東西に700m、南北に250mと細長く、外周の園路は約45分で一周できるそう。

という訳で、同じ「不動前」でも施設面は品川区が充実しており、公園は目黒区が充実している印象でした。エリア検討のご参考までに!

中古マンションの取引は活況 土地・戸建ては販売物件少なめ

過去3年間の成約データを集計すると、中古マンションの取引きは272件、中古戸建ては26件、土地は13件。やはり都心らしく、マンションの取引きが最多となりました。マップにまとめてみましたので参考までにご覧ください。

▲ 東日本流通機構(REINS)に登録された、過去3年間(2021/7/1-2024/6/30)の成約事例を集計したもの(オーナーチェンジ物件を除く)。いずれも「不動前」駅より徒歩15分圏内のみを集計しており、同アドレス内でもそれを超えるものや未登録物件はカウントしていないため、全成約を網羅できているものではないことをご了承いただいた上で、ご参考までにご覧ください。(土地は面積の制限なし、中古戸建て・中古マンションは建物 / 専有面積45㎡以上、いずれも価格の制限なし)

取引件数の多いマンションで比較すると、徒歩15分圏内で品川区は185件、目黒区は87件と大きく差が開きました。中でも注目は圧倒的な取引件数を誇る「西五反田3丁目」と「下目黒2丁目」です。いずれも山手通り沿いかつ目黒川を擁するエリアで、築浅マンションが数多く建ち並んでいます。

▲ 上・目黒川に架かる「市場橋」から眺めた西五反田3丁目の風景。/下・かむろ坂沿いの空き地越しに山手通り方面を見ると、手前には背の低い戸建てなどが並び、通り沿いにビルやマンションがずらっと並んでいるのが良く分かります。

アドレス毎に細かく成約を見てみると、以下のチャートのような結果に。中古マンションの成約件数が集中している「西五反田3丁目」「下目黒2丁目」は、品川区・目黒区それぞれの中で最も高価格であることが分かります。

▲ 赤字部分が特に注目した箇所。

集計欄に注目すると、中古マンションの平均平米数が62㎡ほどなのに対し、中古戸建ては同じくらいの価格で97㎡ほど。坪単価にもかなりの差があることから戸建てを検討したくなりますが、取引件数はマンションの1/10ほどと売り物が少ないのが悩みどころですね。
 

▲ 結果とは裏腹に、細い路地沿いは戸建てが並ぶ低層住宅街になっていることがほとんど。
 

まとめ

取材と調査を元にまとめた「不動前」のポイントは以下の3つ。

・都心でありながら、ひっそりとした “穴場感” がある
・エリアによって表情が異なる
・築浅マンションの選択肢が豊富
 

記事内でも触れた「かむろ坂 さくらまつり」のホームページには以下のような一文がありました。『不動前は都心にありながら住環境がとても良好で、昔から代々住み続けている人と新しく移り住む人が多いエリアです。』

まさにその通り、山手線の「目黒」や「五反田」などメジャー駅まで徒歩圏内でありながら、「かむろ坂」や「林試の森公園」、目黒川など自然に恵まれています。人口密度も高くなく、自分のペースで暮らせそうな点も魅力です。

路地に入ると戸建ても多く建ち並んでいるにも関わらず、中古市場に滅多に売り物が出ないということは、この地に長く住み続けている方が多い証拠でもあります。新たにこの街の住民になりたい場合、中古マンションの購入を念頭に考えることになりそうです。

さくらまつりでも『地域交流と活性化、地域愛の醸成を目指す』と謳われている通り、新旧の住民同士が交わり、このエリアを愛する方々が定住していくのでしょうね。

おまけ 〜わたしの取材メシ〜

筆者が昔から大ファンのテレビ東京「出没!アド街ック天国」の不動前特集でランクインしていた「Amitie(アミティ)」さんでランチをいただいてきました。店内は近隣のオフィスから続々やってきたビジネスマンですぐ満席に。お弁当の販売にも長い列ができていて、人気の高さが伺えました。またかむろ坂沿いに「BAGLE CHECK(ベーグルチック)」という可愛らしいお店を見つけたので、娘と自分のお土産に購入◎
 

▲ 左上・日替わりランチはとんかつとハンバーグでした。美味!/右上・ビルの通路部分でテイクアウトのお弁当を販売。/左下・帰りに立ち寄った「BAGLE CHECK(ベーグルチック)」。/右下・センスの良い店内。モチモチのベーグル、美味しかったです!

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