東京ライフスタイル探訪

【vol.10 二子玉川】商業と自然がダイナミックに交差する街

皆さまこんにちは。東京の街を愛する宅地建物取引士、伊勢谷(いせたに)です。こちらの連載では東京の様々な街を “暮らす目線” と “不動産屋目線” でご紹介していきます。

東京の最西端 都心にも郊外にも出やすい街

今回訪れたのは「二子玉川」駅。雄大な多摩川を擁する自然豊かな街です。記憶に新しいのは、2010年に駅直結の複合施設「二子玉川ライズ」がオープンしたこと。現在の街の姿をレポートすべく、取材に足を運んできました。

「二子玉川」は東急田園都市線と大井町線が交差する駅で、田園都市線の急行に乗れば「渋谷」駅まで2駅・乗車時間10分ちょっとで到着。大井町線の急行に乗れば「自由が丘」駅まで1駅・乗車時間5分ほどで到着します。

多摩川を渡れば神奈川県に入り、駅近くを環八通り・国道246号線が走り、東名高速の東京インターチェンジ・第三京浜の玉川インターチェンジも近く、車移動にも便利な立地です。

100年かけてレジャータウンから現在の姿へ

玉川電鉄が渋谷ー玉川間で開通したのが1907年。それ以前は水田や畑が広がるのどかな土地でした。1922年には「玉川第二遊園地」が開園、1927年に目黒蒲田電鉄の大井町線が開通すると一気に宅地化が進んでいきます。1969年には「玉川高島屋ショッピングセンター」が開業しましたが、60年代からの急速な都市化や多摩川の水質悪化、レジャー施設の多様化によって遊園地の客足は減少、1980年代に再開発準備組合が発足されます。

▲駅の北西側にはいまも尚たくさんの人が訪れる「玉川高島屋ショッピングセンター」。

詳しい歴史はここでは書ききれませんが(詳しくは『東急100年史』をご覧ください)、紆余曲折を経て都市計画が決定されたのは組合発足から20年経った2000年のこと。2005年に第1期「二子玉川東地区市街地再開発組合」が設立されました。

▲多摩川河川敷から見た「二子玉川ライズ」。

駅の南東側に直結する「二子玉川ライズ」は総開発面積約12.1haで、民間再開発としては都内最大級のスケール。『水と緑、光にあふれた街づくり』として、約6.3haの「二子玉川公園」へと続く商業施設、オフィス、住宅街区が整備されました。

大人も子どもも魅了する アクティビティに欠かない暮らし

まず言わずもがな、商業施設の充実ぶりには目を見張るものがあります。60年代から街と共にあり続けている「玉川高島屋ショッピングセンター」に加え「二子玉川ライズショッピングセンター」ができたことで飲食店・アパレル店・映画館などのアミューズメント施設など、1日では回りきれないほどのコンテンツに溢れています。

▲左上・風情ある建物に飲食店が集まる「柳小路」。/右上・人気セレクトショップ「ロンハーマン 二子玉川店」。/左下・ペット関連のお店も充実。こちらは「DOG&CAT JOKER二子玉川-AVENUE&CARE-」。/右下・二子玉川ライズの通路部分ではビアガーデンも開催されていました。

この街にお住まいのファミリーにお話を伺うと、週末になると駅前では子ども向けのイベントが常に開催されていて、暮らしていて飽きることがないとのこと。実際週末に足を運んでみると、夏休み期間に合わせて『TRY ART PARK』と題しマスキングテープを使ったワークショップやボールプール、ミニコンサートなどが開催されていて、家族連れで大変な賑わいでした。

▲開放的な吹き抜けには大屋根が架かっているため、雨天時もイベント開催が可能。「二子玉川ライズ」敷地内は車道と歩道が分離されており、子連れで安心して歩ける点も魅力です。
 

賑わいの先にある「二子玉川公園」

「二子玉川ライズ」の商業、オフィス、住宅街区を抜けると、多摩川沿いに整備された「二子玉川公園」へと繋がります。

▲川沿いで夕涼みする人々だけでなく、ウエディングフォトを撮る人、自転車の練習をする人の姿も。

猛暑の時期というのもあってか、平日・週末と2回足を運んだものの、いずれも夕方はそれほど混み合っていませんでした。園内では思い思いにリラックスする人、子どもと遊ぶ人、犬の散歩に訪れた人の姿が。桜の時期に訪れた際はすごい人出だったので、時期によって緩急があるのかもしれません。
 

▲左上・広大な園内にはボール遊びが可能な広場も。/右上・遊具が充実したエリア。/左下・世田谷区初の回遊式日本庭園「園真帰」。/右下・園内の一番高い場所にある「スターバックスコーヒー 二子玉川公園店」。

もうひとつの大自然、国分寺崖線

駅の北西側、多摩川と砧公園に挟まれるようにして帯状に広がっているのが「国分寺崖線(がいせん)」です。これは長い年月をかけて多摩川によって削られた河岸段丘(かがんだんきゅう)で、現在も生い茂る緑が残されています。
 

▲左上・「岡本静嘉堂緑地」を背景に、バスが走る大蔵通り。/右上・「瀬田四丁目旧小坂緑地」敷地内。/下・湧水が源の丸子川沿いも緑が豊か。マンションが多く建ち並んでいます。

緑地を境に高低差があるのが特徴で、「二子玉川」駅からだと急坂を登る必要があるエリアも存在します。バスを利用したり、「上野毛」や「用賀」から平坦もしくは下り坂でアクセスするなど、住みこなすにはちょっとしたコツが必要そう。駅から離れた物件を検討する際は、日常で使うルートを辿ってみると良いでしょう。
 

学校も習い事も選択肢が豊富

では、この街の子育て環境はどうでしょうか。駅の北側、国道246号線を越えたあたりに「花みず木通り(砧線跡)」があり、その裏側に保育施設が集まる一体がありました。車の走行速度を制限する標識や子どもの飛び出し注意を促す看板が貼られ、地域一体となって子どもの安全を守る姿勢が見られました。
 

▲左上・「世田谷区立玉川保育園」。前の通りは玉川保育園通りと呼ばれているよう。/右上・自己教育力を前提に置いている「モンテッソーリ 二子玉川こどものいえ」。英語で過ごすインターナショナルコースも。/左下・二子玉川商店街通り沿いにある「世田谷区立 二子玉川小学校」。/右下・岡本自治会の掲示板には盆踊り大会やラジオ体操のお知らせも。

また子ども向けの習い事やスクールも充実しています。学習塾、体操教室、アトリエなどを数多く見かけたほか、各施設でも親子で参加できるイベントを定期的に開催しているようです。自然豊かなため、生き物観察のワークショップも各所で行われています。
 

▲左上・「コナミスポーツクラブ 二子玉川」に入っていく親子。/右上・「トーマス体操スクール 二子玉川校」。/左下・「二子玉川公園 ビジターセンター」主催で開催されるイベントの掲示。/右下・「旧小坂家住宅」で開催される親子野点の掲示。

再開発によって駅周辺は地価が上昇 国分寺崖線周辺は高級邸宅街

「二子玉川」駅から徒歩15分圏内(かつ都内)の不動産取引について調べてみました。過去3年間の成約は、中古マンションが206件、中古戸建てが13件、土地が10件という結果に。アドレスごとにまとめたマップをご覧ください。
 

▲ 東日本流通機構(REINS)に登録された、過去3年間(2021/8/1-2024/7/31)の成約事例を集計したもの(オーナーチェンジ物件を除く)。いずれも「二子玉川」駅より徒歩15分圏内(かつ都内)のみを集計しており、同アドレス内でもそれを超えるものや未登録物件はカウントしていないため、全成約を網羅できているものではないことをご了承いただいた上で、ご参考までにご覧ください。(土地 / 建物 / 専有面積45㎡以上、いずれも価格の制限なし)

もう少し戸建てが多い印象がありましたが、駅周辺は圧倒的にマンションの成約に偏った結果に。以下に詳細をまとめてみました。
 

注目箇所をオレンジ色でハイライトしてみました。まず全体を通じて『ファミリー向き物件が多い』ということが見て取れます。中古マンションの平均平米数は73.39㎡、中古戸建ては86.37㎡と、これまで取材してきた数々の街より広めです。

また中古マンションに着目すると「玉川1丁目」が最多取引数となっています。これは2010年に竣工した「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」が頻繁に中古市場に売りに出ているためです。46件の成約の内、実に42件を締めています。駅周辺の「玉川」アドレス、北側の「瀬田」アドレスが高額で取引されており、築年数も浅め。一方駅から離れた「鎌田」「上野毛」「野毛」アドレスは価格が下がり、築年数も古めです。

一方、土地や中古戸建てでは国分寺崖線に近い「瀬田」アドレスの取引が多く、面積は広く価格も高額です。駅からの距離はさらに伸びるものの、「岡本」アドレスも古くから高級邸宅街として知られているエリアです。

最後に、筆者自身『川沿いの暮らし』に強い憧れを抱いているのですが、現実問題として洪水の危険性があるのもまた事実です。多摩川〜国分寺崖線の間のエリアは浸水予想エリアに指定されているため、災害時を想定したうえで検討するのが良いでしょう。詳しくは世田谷区の「洪水・内水氾濫ハザードマップ(多摩川洪水版)」をご確認ください。

▲浸水エリアを避けるため、ひとつの目安となるのが「丸子川」より北側であること。

まとめ

取材と調査を元にまとめた「二子玉川」のポイントは以下の3つ。

・ファミリーにとって暮らしやすく、楽しい街
・商業と自然が融合した環境
・ハザードマップの確認を推奨

「二子玉川ライズ」の誕生によりアクティビティの数も、住みやすさも大きく向上しました。川沿いでの暮らしは気持ちがよく、国分寺崖線の周辺にも手付かずの自然が豊かに残されています。

ファミリー向きの広めの物件が多く、平均築年数も2000年代と浅め。ご家族揃って長くお住まいになれる土壌が整っていると言えます。

一方で自然災害には逆らえないため、万が一の時にどう対策を取るのか、しっかりとご自身で、パートナーと、ご家族揃って考えた上でお住まいになるのが良いでしょう。

車を使っての生活も考えると、都内23区の中でもトップクラスに行動範囲が広く、豊かな暮らしが送れそうな街「二子玉川」。まずは遊びに出かけ、ここで暮らす妄想を繰り広げてみてはいかがでしょうか。
 

おまけ 〜わたしの取材メシ〜

8月の週末、涼しくなってきた夕方から娘と「二子玉川」を訪れました。子ども向けのアクティビティを楽しみ、「二子玉川ライズ」の歩道でのびのび走り回ったあとは、ずっと伺ってみたかった多摩川河川敷にあるフレンチレストラン「TOKIO フレンチルナティック」さんへ。古い木造アパートに店を構え、テラス席は川風を感じる最高に気持ちのいい空間。基本的にセルフサービスなので価格もリーズナブルで、他ではなかなか味わえない素敵な時間を娘と過ごすことができました。子どもwelcome、ペット連れでも行けますよ!
 

▲いただいたのは「本日のスープ(アスパラとほうれん草のポタージュ)」「ウニのムース 生ウニとキャビア添え」「パテ・ド・カンパーニュ」とバゲット。1歳の娘がテラスから店内に入るたび「ただいま〜」と言っていて、店員さんも他のお客さまも皆にっこり(笑)。美しい夕日を眺め、忘れられないディナーとなりました。

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