【vol.14 明大前】乗り換えだけじゃない! 線路と大通りの裏に隠れた静かなる住宅街
皆さまこんにちは。東京の街を愛する宅地建物取引士、伊勢谷(いせたに)です。こちらの連載では東京の様々な街を “暮らす目線” と “不動産屋目線” でご紹介していきます。
南は世田谷区、北は杉並区 電車移動も車移動も便利です
「明大前」といえば京王線と井の頭線が交差する “乗り換え駅” としての印象が強い街。しかし皆さま、それ以外に何か思い浮かびますでしょうか……? ある種ポカンとしてしまう方、恥ずかしながら筆者も同じです。今回はそんな「明大前」にフォーカスを当て、住まう街としての魅力を深堀りしていきます。
「明大前」駅から京王線の特急に乗れば「新宿」駅まで2駅約7分で到着、井の頭線の急行に乗れば「渋谷」駅まで同じく2駅約8分で到着するという利便性の高さ。周辺の駅距離も近く、京王線のお隣駅「下高井戸」「代田橋」にはそれぞれ徒歩12〜3分の距離、井の頭線のお隣駅「東松原」には徒歩12分、「永福町」には徒歩17分です。
▲ お隣の「下高井戸」へ行けば東急世田谷線で「三軒茶屋」への移動もしやすく、商店街の賑わいも享受できますよ。「下北沢」や「代々木上原」にも自転車で行ける距離。
東京都中央区を起点として長野県塩尻市までを結ぶ国道20号線(通称:甲州街道)を境として、南に世田谷区、北に杉並区と分かれます。甲州街道の上部には首都高速道路が走っており、永福出入口が近いため車移動にも非常に便利。
▲ 甲州街道の上り方面は特に朝が渋滞するため、時間には余裕を持って移動しましょう◎
「明治大学」のお膝元 学生向けの飲食店が多数
駅を出て甲州街道を渡ると、もうそこは「明治大学 和泉キャンパス」。1934年に明治大学がこの地に移転したことを受け翌年に「明大前」駅と名称が変わったのですが、余談としてそれまでは「火薬庫前」という物騒な駅名だったようです。理由としては徳川幕府の煙硝蔵(鉄砲・火薬などの貯蔵施設)が甲州街道沿いにあったから。
▲ 上・「明治大学 和泉キャンパス」/下・講義の時間に合わせ登校する学生さんたち。
駅前の商店街にはそんな学生さんたちを支えるべく、ファーストフード店やラーメン店、定食屋、良心的な価格帯の居酒屋などが並んでいます。しかし「新宿」や「渋谷」に近いからか、そこまで街が学生で溢れかえっている印象はありません。たしかに自分が学生であれば、きっと大きな街で友人と遊んだり飲みに行ったりするだろうなと想像しました。
▲ 上・「すずらん通り」には牛丼屋や定食屋、ファミレスに串カツ居酒屋など良心的な価格帯のお店が並びます。/左下・駅向かいにある商業ビルにはファーストフード店や大衆居酒屋。/右下・お昼休み、ラーメン店に並ぶ学生さんたち。
ちなみに大型のスーパーやドラッグストアなどは数が少なめ。駅ビル「フレンテ明大前」に入る「京王ストア」や「マツモトキヨシ」、2024年6月にリニューアルオープンした甲州街道沿いの「スーパーバリューロピア松原店」をメインで使うことになりそうです。先日ロピアで買い物してきましたが、1階には八百屋の「アキダイ」が入っており、地下のスーパーも広々していて良かったですよ。
▲ 左・「フレンテ明大前」/右・「スーパーバリューロピア松原店」
南の “世田谷エリア” をぶらり
世田谷区、杉並区いずれにも共通して言えることですが、線路沿いや大通り沿い以外は「第一種低層住居専用地域」に指定されているエリアがほとんどです。
甲州街道沿いの南側には築年数の経過したマンションから築浅のマンションまでずらっと並んでおり、北側の騒音は少し気になる部分ではありますが、LDKが配置されているであろうメインの南側の眺望や日当たりが良くオススメです。
▲ 上・甲州街道の南側に建つマンション群。/下・そのマンション群と細い路地を挟んだだけで低層の戸建て住宅がひしめくエリアへと変わります。
なお、現在「明大前」駅は高架化の工事が進んでおり、線路の南側には仮囲いができていました。駅前ロータリーを刷新する案も出ているようですので、今後の動きに注目ですね。
▲ 上・2024年12月現在の線路横の様子。/下・京王電鉄京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業より引用。
こちらのエリアには世田谷市民緑地に指定されている「松原一丁目 日章館 亀井邸」があり、立派なお庭には数種類の桜の木や季節ごとに咲く花々が植えられています。建物は2022年に国登録有形文化財に指定され、取材時は偶然にも家主である亀井さまにお話を伺うことができました。『この角度から見るといいんですよ』『いまはこの花が見頃だね』など様々に案内してくださいました。建物内部は非公開ですが、お庭は日中開放されているのでぜひ訪れてみてください。
▲「松原一丁目 日章館 亀井邸 市民緑地」。亀井さまが庭の柚の木からひとつもぎってプレゼントしてくださいました。
井の頭線「東松原」駅方面へ下っていくと “しーん” と静かな住宅街。そんな中で「日本女子体育大学」の附属学校や小さな児童公園などを見かけました。小学校の近くでは旗を持って登下校を見守るボランティアの方々がいらっしゃり、安心して通学させられそうです。
▲ 左上・「日本女子体育大学附属 二階堂高等学校」。敷地内には同大学附属の「みどり幼稚園」も。/右上・15時、子どもたちと保護者の方で賑わう「松原公園」。/左下・「世田谷区立 松原小学校」/右下・「松原保育園」/下・“松原エリア” の住宅街の様子。
北の “杉並エリア” をぶらり
甲州街道は井の頭通りと交差しており、こちら側は “永福町エリア” と呼びたくなるくらい、南の “世田谷エリア” とは雰囲気が異なります。共通しているのは住宅街がとても閑静なことでした。
▲ 左上・井の頭通り沿い。/右上・同じ通り沿いは「杉並区立 遊び場90番」として整備されています。/左下・ほとんど物音が聞こえず驚いた住宅街。/右下・「子ども・子育てプラザ和泉」
とても魅力的に感じたのは神田川沿い。空が広々しており歩いているだけで心洗われるような清々しい気持ちに。ジョギングや犬の散歩に訪れる方々を時折見かけました。
▲ 左上・川沿いには神社やグラウンドが。/右上・「区立杉並和泉学園」は小中一貫校で校舎も新しい。/左下・川沿いには低層マンションや戸建て住宅が並んでいます。/右下・水がきれいで、サギやカモ、鯉をたくさん見かけました。
下の写真、まるで別荘地の渓谷のようですが、実は甲州街道沿いにある「玉川上水永泉寺緑地」。“杉並区エリア” はお散歩に適した場所が多数存在する印象でした。
▲ 「玉川上水永泉寺緑地」。写真右手には甲州街道が走っています。
土地や戸建ての選択肢が豊富 マンションは大通り沿いに建つもの多数
過去3年間の「明大前」駅から徒歩15分圏内の成約事例を独自に集計してみました。都心の街だと成約数が中古マンションに大きく偏る傾向にありますが、「明大前」では土地と中古戸建ての合計数が大きく引けを取らないのが特徴です。
▲ 東日本流通機構(REINS)に登録された、過去3年間(2021/12/1-2024/11/30)の成約事例を集計したもの(オーナーチェンジ物件を除く)。いずれも「明大前」駅より徒歩15分圏内のみを集計しており、同アドレス内でもそれを超えるものや未登録物件はカウントしていないため、全成約を網羅できているものではないことをご了承いただいた上で、ご参考までにご覧ください。(土地 / 建物 / 専有面積45㎡以上、いずれも価格の制限なし)
予想通りではありますが、中古マンションの成約は甲州街道や井の頭通りなど大通りを擁するアドレスに集中しています。細かく分析した以下のチャートをご覧ください。
平均価格を比較すると、土地と中古戸建ては9,200-9,300万円ほど、中古マンションは5,800万円ほどと大きく開きがありました。また中古マンションの平均築年数を比較すると杉並区は2007年なのに対し世田谷区は1987年と、20年もの開きがあったのも興味深いポイントです。
まとめ
取材と調査を元にまとめた「明大前」のポイントは以下の3つ。
・交通アクセス “◎”
・意外と静かな環境
・ファミリー向き物件多数
「新宿」や「渋谷」へ乗車時間数分で到着できるのは文句なしに便利。また首都高速を含む主要な幹線道路が複数走っているからこそ車での移動も楽々。一方、少し住宅街に入ると驚くほど静かで、駅周辺も学生街ならではのガヤガヤした騒がしさはありません。土地や戸建ての選択肢も豊富にあることから、ご家族で腰を据えて長く住まえそうだと感じました。
“街に派手さや賑やかさは求めないけれど、交通アクセスの良さは手放せない” という方には特にオススメです。
おまけ 〜わたしの取材メシ〜
2024年8月、井の頭線の線路沿いにオープンした「麻婆STAND明大前」さんでランチをいただいてきました。こちらは評判の「高井戸麻婆Table」の2号店。窓から行き交う電車を眺めつつ、挽肉の旨味たっぷり+山椒の効いた麻婆豆腐をご飯と共に掻き込むと、いつの間にやら汗がじんわり。プルプルの水餃子もとても美味しかったです! ご馳走さまでした◎
▲ 上・商店街から線路沿いへ少し階段を上った先にあり、その隠れ家感も好きでした。店内は日当たりがよくてポカポカ。/下・麻婆豆腐定食を注文し、デザートに杏仁豆腐もいただきました。寒い日の取材にぴったりなランチになって大満足! 店員さんも優しかったです♪